Lil Rudy Rul の生きた街

 星野リゾートの新今宮の用地買収が話題となった。長らく謎の空き地の上空には何もなく、いくつかの大隅アパートの生活感に焦げた建物が、ごく近い蜃気楼として漂っていた。そんな地を開発する真意は分からないが、決して、突飛な考えでもなく、新今宮の魅力と可能性、そして地域への貢献をそれなりに考えたものではないだろうかという期待もある。
 
 18歳のときから新今宮は馴染み深い街であったが、数年前、Lil Rudy RulのPVに映った新今宮の風景に心が動いた。故郷の西成の湿地より、遥かに高い台地の病院で生まれたことを最初の口上として、新今宮の汚れきった美しい街並とともに、Lil Rudy Rulのまだ幼い青春の遍歴が唄声とともに響き、それは、薫習という言葉そのままに、私の心に響いた。

 西成を属性とするLil Rudy RulのPVには、西成以外の街がいくつか出現する。それはLil Rudy Rulの西成のメタファーとしての、別の西成でもある。あるいは、その別の西成が、Lil Rudy Rulの西成的世界を色付けしている。
 そのメタファーには、北区の長柄のさざなみ団地、あるいは夜のアメリカ村が用いられる。大阪市内を縦断してLil Rudy Rulの記憶と世界は存在している。

 それは西成を唄うLil Rudy Rulの隠喩的な風景であろうが、同時に、萩茶から千本、津守、いろいろな街の匂いを持つ西成の十色で育ったLil Rudy Rulの包括的な世界なのではないかと私は思った。