吹田の泉

 私が住む自治体、吹田市とは統一感のない街でもある。
北部には千里ニュータウンが広がり、かつて大阪万博で賑わった跡地は、エキスポランドを経て、エキスポシティという観光地にもなる巨大なショッピングモールが存在している。そして大阪を代表するサッカーチームであるガンバ大阪のホームタウンも吹田市北部にある。また吹田市北部には日本で一番最初に自動改札機を導入した「北千里」があり、その地に代表されるようにニュータウンの景色が広がる。
 しかし、そのように北部に代表されるイメージとは異なる風景を、数多く吹田市は持っている。
 関西の私大のシンボルである関西大学のある「関大前」の付近は、ひょっとして日本最大の学生街でなかろうかと思われる長い街並が存在している。居酒屋から古本屋、ファーストフード店、学生相手だけで需要を賄う街並には、私の自宅の近所でありながら、足を運ぶには躊躇してしまう。
 運動をしていた私に幸いだったのは広大な千里の丘陵であった。上り坂、下り坂、起伏の激しい街並を走り込みながら、私の心肺は心拍数の上限に幾度も迫った。
 縦長の吹田市の地形に応じて、東からJR、阪急、地下鉄と三つの路線が走っている。吹田の都心は当然、地下鉄御堂筋線の「江坂」駅である。巨大なビル群が高架の駅を鋏み、ハンズを中心とした商業ビルも多く、またスノップな若者たちが開く店も多く、大阪に新しいムープメントを起こしつつあるが、私にとって江坂とは、恩師とともに酩酊できた街でもあった。酔いつぶれふらつく恩師を支えながら、自宅まで送った。普段は怖く遠い存在の恩師も、その時だけは、不肖の弟子である私が支えていられる喜びを感じた。
 私が普段呑むのは、一番東のJR「吹田」駅である。駅の地下には扉のない暖簾だらけの立ち飲み屋の風景が、まるで立ち飲みテーマパークのごとく存在している。
 かつて、イギリスの田園都市を見本にした「千里山」というセレプな街のイメージの意を借りて、その地の隅っこに終の住処を選んだ私であるが、所詮、尼崎の長屋育ち。吹田市南部の庶民的な風景が地元の人間として誇らしくもある。
 地元のアサヒビールの工場のそばに、泉殿宮がある。泉の神様であり、アサヒビールの源泉でもある。この神社を初詣の場所として決めて、幾つ鈴を鳴らしただろう。